Saturday, January 07, 2017

「豊穣の海」の「昴」の黒子について

学生の頃、三島由紀夫の豊穣の海4部作を読んで、内容以前に気になったことがありました。この物語は主人公の松枝清顕の転生が主題になっていますが、転生した人物の脇腹にある「昴(スバル)のような3つの黒子(ホクロ)」がカギとなっています。

気になったのは「スバル」で、スバルってのはこれです。プレアデス星団です。


3つではないのです。ちょうど今の季節、夜中に天頂付近に見えていると思いますが、もやっとした塊に見えます。

3つの星、ということだと、オリオン座の三つ星のことじゃないかなあと思うのですね。オリオンのベルトの位置の3つの星です。


スバルの場所はオリオンの右斜め上あたり。

無粋なことのようですが、物語の中で「昴」は何度も出てくる大事なことで、学生時分の私はこのことが非常に気になっていました。

その後、もう25年も前のことですがアメリカにいた頃、地元の日本語誌に、日本文学を英語で紹介されている翻訳家の方が、日米の編集者のチェックの仕方の違いを書かれていました。アメリカの編集者の権限は大きく、誤りやわかりづらい点を作家に指摘してくる、翻訳についても例外でなく、翻訳のみならず原作にさかのぼる指摘があって翻訳者としては困ることがある、とのことでした。例として三島由紀夫の小説(どの本だったかは失念)が挙がっていました。一方、日本では大作家の作品に編集者が口を挟むことはないので、結果として全責任は作家にあることになる、という話です。

この記事を読んでこの翻訳家の方に、スバルについて御存知ですか、という内容の手紙を書いたところ丁寧な返事を貰いました。翻訳家の方から別の文学者の方に照会してくださり、その方の手紙のコピーが同封されていました。それによると「土屋氏が指摘の箇所は、私も前々から気になっていたところです。.... 編集者がチェックし、勇気をもって作家に注意を促すべき事柄だったのではないでしょうか」とのことでした。ということで私の気は済んだのです。

実家で片付けをしていたら、この手紙が出てきたので、ブログを書きました。

最近この翻訳家の方がJapan Timesに記事を書かれているのを見つけました。御健在なようですね。